はじめに [対話法] その2(他の可能性は?) その3(視点を変える)
ソクラテスの対話法(英語で言うと、dialogue ダイアログ )。
疑問を発すること!これが研究の仕方で多分一番大事なこと、一番大切な秘訣です。でも、詳しく言うとソクラテスは発見するためには使っていません!ソクラテスは’無知の知’といって、偉そうにしていて何かを分かっているようなつもりでも実は人間は何も分かっていない!ということを弟子や一般市民たちに知らしめるためにこの「対話法」を使いました。質問をして行くうちにそれに答える人間は自分が何も分かっていないことを思い知らされることになります。
この対話法が自然の法則を発見するために非常に重要なことは後世の人が気が付きました。特に、ガリレオあたりでそのことがハッキリしてきて、例えば、ガリレオは子供たちのために『天文対話』(岩波文庫)という本を書いていてその中でこの対話法を駆使しています。実は、なんでも研究でも、この対話法を利用しています!例えば「あなたも社長さん」コーナー、、、
言い換えると、幾つかの質問を繰り出していって、それに答えていって、その答えを元に次の質問を出して、それに答えて、、とちょうどいい順序に質問を繰り出していってそれに答えてゆくと、分からなかったことが発見できるようになっています。人間は未知の領域に入り込むと自分の置かれている状況や方向性を見失いやすいようにできています。それを手助けするために道しるべになる質問が必要になります。
正しい順序で質問を繰り出せるかどうか?、これがカギです。それに答えてゆけば自然に解答へと導かれます。一番いいのは、誰かに1対1でそれを指導してもらうこと、、、でもそれできるヒト日本にいるでしょうか?これが教育で一番大切なんですけど。
映画とかのアメリカの授業風景で、先生と生徒が一体になって質問し合って討論していますよね。ピーンと来ました?この訓練ですよね。この訓練、日本でできる?実は、アメリカではこのコツを中学生・高校生に分かりやすく解説している本が出ています。有名な本で、アメリカの一流大学であるアイビーリーグ校(ハーバード大、エール大、プリンストン大、、、)に入る人たちが昔からお世話になっていました。George Polya の『 How to solve it 』という本。対話法を数学の問題の解き方に応用しています。

ポリアという数学者(1887~1985)が学生のときに家庭教師をしていて生徒に説明していたときに、問題の解き方を見失ったことがあって、恥ずかしくて悔しくて、それ以来、分からない何かを見つけ出すにはどうすればいいか、って必死に考えてこの対話法に行き着いたと言っています。この本は数学の解法に焦点を当てているけど人生の問題一般に通じるものがあると思います。20世紀後半のアメリカの優秀な研究者は中学・高校時代にこれを参考書にして数学を勉強していました。20世紀に活躍しているアメリカ人の精神の強さの出発点かもしれません。
本の中身を少しだけ解説。数学の問題を解くには、数学の問題の特徴をよ~く掴んでおく必要があります。数学の問題は、現実の問題よりももっと明快で、必ず3つの要素があります。
1)求めるものがある。「~~を求めなさい!」
2)与えられているものがある。「~~というときに、」
3)前提条件がある。これは問題文には明示されないことも多い。
そうすると、数学の問題を解くことは、結局、
与えられているもの → (前提条件) → 求めるもの
というように、与えられているものから、求めるものへの、隠されている道を見つけ出す、ことに帰着されます。そこで、人間は道を見失いやすいので、道に迷ったとき、または、道に迷いそうになったときに、誰かに質問をしてもらうと前進できます。或いは、経験をつんで慣れてきたら誰かに頼らずに「自問自答する」ことにより「求めるもの」へとたどり着くことができるようになります。
問題が最初に与えられたときにする一番大切な質問は3つあります。さて、それは何でしょう?この3つの質問を自問自答するだけで、比較的やさしい問題は大体解けるようになります。
人間って不思議なもので、考えに没頭し始めると何でこんなことをしているのか、すら忘れてしまいます!そんなときに是非この順序でまず自問自答すること!
1)求めるものは、何?2)与えられているものは、何?
3)条件は、何?
この3つの質問の順序が実はとっても大切です。人間の脳はこの順序で質問を繰り出して答えてゆくと、あ~ら、不思議、比較的やさしい問題の場合には答えが見えてくる、、、
でも少し難しい問題や現実の問題に対してはもう少しシステマッチックに(系統的に)考えてゆくこと、、(上で紹介したポリアの本で始めにまとめにある第2段階の質問を繰り出してゆくこと!第3段階と第4段階は解答を書き出して振り返って確かめる作業)。だから、第1段階(問題の理解)と第2段階(問題解決の段階)が特に大切です。
(ポリアの序章のまとめを少しだけ改変;特に第2段階)
第1段階(問題を理解する) - What is the unknown? What are the data? What is the condition?
- Is it possible to satisfy the condition? Is the condition sufficient to determine the unknown? Or is it insufficient? Or redundant? Or contradictory?
- Draw a figure. Introduce suitable notation.
- Separate the various parts of the condition. Can you write them down?
第2段階(すぐには与えられていることと求めるものが結びつかないとき));
1)まず求めるモノに注目!
2)それでもダメなときは求めるものに関連している問題を考える。
3)それでもダメなときは問題を別な観点から眺めてみる!求めるものを言い換えられない?与えられているものを言い換えられない?
4)それでもダメなときは、何か見落としがない?何か忘れていることがあるんじゃあない?
問題解決はこの4種類の思考を行ったり来たりすること!ここで対話法が威力を発揮します!)
- Look at the unknown! And try to think of a familiar problem having the same or a similar unknown.
- Have you seen it before? Or have you seen the same problem in a slightly different form?
- Do you know a related problem? Do you know a theorem that could be useful?
- Here is a problem related to yours and solved before. Could you use it? Could you use its result? Could you use its method? Should you introduce some auxiliary element in order to make its use possible?
- Could you restate the problem? Could you restate it still differently? Go back to definitions.
- If you cannot solve the proposed problem try to solve first some related problem. Could you imagine a more accessible related problem? A more general problem? A more special problem? An analogous problem? Could you solve a part of the problem? Keep only a part of the condition, drop the other part; how far is the unknown then determined, how can it vary? Could you derive something useful from the data? Could you think of other data appropriate to determine the unknown? Could you change the unknown or data, or both if necessary, so that the new unknown and the new data are nearer to each other?
- Did you use all the data? Did you use the whole condition? Have you taken into account all essential notions involved in the problem?
第3段階 Carry out your plan.
- Carrying out your plan of the solution, check each step. Can you see clearly that the step is correct? Can you prove that it is correct?
第4段階 Examine the solution obtained.
- Can you check the result? Can you check the argument?
- Can you derive the solution differently? Can you see it at a glance?
- Can you use the result, or the method, for some other problem?
この4段階のまとめは、色々な問題を解決した経験をまとめてあるものです。ので、残念ながら、これを覚えても、問題は解けるようになりません!自転車や自動車の運転と同じです。運転の仕方を言葉で覚えても運転はできるようにならないでしょう?色々な状況で運転してみないと!色々な問題を解いてみて上のまとめを利用してみないと!ポリアの本は実例を使って上のまとめの質問の仕方を練習できるようになっています。自動車学校があるくらいですから、この対話法を自分のものにするためにも学校が必要!でも、対話の仕方を教えてくれるところあるでしょうか?ポリアの本を読むとよく分かるけど一人で勉強するのはけっこう難しいです!
さて、長々と数学の問題の解き方を説明してきましたたけど、研究の仕方も何が問題点かが分かったら結局同じです。第1段階:問題を理解する。第2段階:システマチックに疑問を発すること!対話をすること!
少しだけ研究の仕方の秘訣が見えてきました?この秘訣は
戦略的思考(strategic thinking)にも重要になります。
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